私は本が好きで、暇さえあれば本屋に立ち寄る「立ち読みマニア」である。
どんな本でも読めば、それは血となり、肉となって心や体に宿る。実に本屋は「知の泉」である。
基本的に本であればなんでも読むが、好きなジャンルになるとノンフィクションであったり、それに近い
モデル小説だったりする。その中で、自分に一番フィットする作家と言えば、「松本清張」である。
実にポピュラーな作家ではあるが、実に奥が深い。その作品の相当数が映画やテレビドラマになっている
事を考えると、潜在的なファンは相当数いるだろう。私も本を読み、それを自分の頭で映像化して、
いろいろと楽しむわけだが、清張の作品は映画でもかなりのインパクトがある。
そこで、映画やドラマになった作品で自分なりのランキングを作ってみた。
1.砂の器
「ズーズー弁」と「らい病(ハンセン病)」、そして「伊勢の映画館」が
殺人事件のポイントとなっていく。丹波哲郎の演技が最高。
2.点と線
汚職事件のキーマンを九州の香椎で殺害し、自らは北海道に出張していたと
アリバイを主張する犯人。東京駅の4分間のトリックやその当時としては珍しかった
飛行機を使っての犯行など、構成力を感じる名作の一つ。
3.ゼロの焦点
何回見ても飽きないモノクロ映画だが、北陸の冬の厳しさが伝わってくる
不思議。「ヤセの断崖」の迫力は、このブログでもお伝え済み。
4.疑惑
北陸富山の毒婦「鬼塚球磨子」の保険金殺人事件をテーマにした物語。
なぜか死刑になってもおかしくない被告が無罪になる最後。岩下志麻演じる国選弁護人の
佐原律子の裁判の進め方がすごい!
5.鬼畜
どうしようもない身勝手な父親の尻ぬぐいのために、次々と犠牲になっていく子供たち。
崖から突き落とされ一命を取り止めた長男利一は、それでも父親をかばい続けた。
6.10万分の1の偶然
高速道路で起きた交通事故を誰よりも早く現場に駆け付け、スクープしたアマチュアカメラマン。
新聞社のニュース写真最高賞を受賞したその写真は、実はカメラマンによる自作自演の事故だったのである。
7.波の塔
新米の検事とその検事が担当する事件のキーマンの妻が出来てしまった物語。
若かりし頃の津川雅彦と有馬稲子が美しい。
8.黒の奔流(本のタイトルは「種族同盟」)
出世を企むビンボー弁護士矢野武が4の「疑惑」と同じく、推定有罪の被告(貝塚藤江)を無罪に
導き脚光を浴び、大物弁護士の娘を娶っていく。しかし、無罪になった藤江は矢野弁護士に思慕し、
「娘と結婚をするなら自分が真犯人であることを告白する」と矢野弁護士を脅した。
矢野は次第に藤江に殺意を抱き、富士の見える西湖の畔で決行するが、藤江もそれを覚悟し、
二人は湖の奥深くへ消えていった。
9.わるいやつら
女狂いで経営に無頓着な二代目病院長(医師)の没落していく物語。きっかけはある殺人事件だった。
10.内海の輪(本のタイトルは「霧笛の町」)
やがて助教授となる考古学者の江村と元兄嫁(西田美奈子)との不倫物語。考古学の権威である学長候補の娘と結婚した江村は
この不倫がばれてしまうとすべてを失うこととなるため、美奈子を殺害することを考えた。後は、8.黒の奔流と同じ末路を辿る。
とにかく、清張の取材力には甚だ脱帽する限りだ。ほとんど、ノンフィクションのような構成に読むほど(見るほど)に
飲み込まれていく。だからこそ、読書は面白い。